こんにちは。
離床できない方に関節可動域訓練を行うことは多くあります。
その根拠について説明はできるでしょうか?
今回はそんな一助になるかもしれない文献について取り上げます。
●文献
今回の文献は「A randomized controlled clinical trial of the effects of range of motion exercises and massage on muscle strength in critically ill patients(重症患者の筋力に対する可動域運動とマッサージの効果に関する無作為比較臨床試験)」。
意識のあるICU患者90名を無作為にマッサージ群、ROM運動群、コントロール群の3群に分け、研究を行っています。
患者の疾患は内科、外科、コロナなど様々な疾患が混ざっていました。
また、切断、骨折、神経難病などがないことも条件になっています。
方法は患者の四肢を1日1回、7日間連続でマッサージまたはROM運動を行うというもの。
7日未満でICUを出た患者は除外されています。
介入前、介入4日目、介入7日目の午後8時に、ハンドヘルドダイナモメータを用いて筋力を評価しました。
●ROM運動とマッサージの内容
ROM運動は以下のようなもの。
・上肢:肩の屈曲、肩の伸展、肩の外転、肘の屈曲と伸展、手首の屈曲と伸展、親指と指の関節(中手指節関節と指節間関節)
・下肢:股関節と膝関節の屈曲、股関節の伸展、股関節の外転、足首の背屈、足底屈
・すべての動作はリズミカルに10回繰り返す。
・実施時間は30~60分間
マッサージは以下のようなもの。
・スウェーデン式マッサージ
・撫でるような動き(エフルラージュ)、振動、捏ねるような動きを実施
・マッサージしやすくするためにオリーブオイル(約20cc)を使用
・上肢、下肢、背中、胸部を30~60分間連続してマッサージ
コントロール群については呼吸療法と四肢の理学療法と書かれたのみでそれ以上の詳細はありません。
●結果
上肢では介入前と比べ、ROM運動群は右0.63kg、左0.61kgの筋力増強、マッサージ群は右0.29kg、左0.27kgの筋力増強を認めました。
一方、コントロール群は右0.55kg、左0.56kgの減少だったそうです。
下肢では介入前と比べ、ROM運動群が右0.53kg、左0.54kgの筋力増強、マッサージ群は0.27kg、左0.26kgの筋力増強を認めました。
一方、コントロール群では右0.70kg、左0.71kgの減少に終わっています。
コントロール群の詳細が分からないため、推測にはなってしまうのですが、方法の流れを見ると、おそらくコントロール群は他動的な運動を行ったのではないかと思います。
研究結果を見ると、意識のある方には10回程度でも自発的な運動を促すことが筋力維持・増強に有効と言うことが言えました。
短期間ではありますが、早期からの運動は重要でしょうし、生活期に移ってからでも少しでも動くことは重要と言えそうです。
いかがだったでしょうか?
こうしたことも根拠の1つに入れつつ、臨床に取り組みたいですね。
それではまた次回の記事でお会いしましょう。