こんにちは。
脳卒中後の患者さんは病院でも在宅でも転倒予防が大きな課題の一つになります。
転倒予防のために様々な研究もなされており、今回ご紹介する文献もその一つ。
こけないために歩くだけというのはあまり効果的ではないのかもしれません。
●文献
今回ご紹介するのは2022年9月に出された「Exercise for preventing falls in post-stroke patients: A network meta-analysis(脳卒中後遺症患者の転倒予防のための運動。ネットワークメタアナリシス)」。
この研究でも過去多くの研究から調べられてきた転倒予防に効果的な運動とはなんなのか研究されています。
発表者のグループが発足から2021年9月までの脳卒中後の転倒予防に関するランダム化比較試験(RCT)を検索し、どのような運動が効果があったのか分析しました。
主要結果は転倒回数となっており、いかにこける回数を減らせたかというものを重視してデータを出しています。
●転倒予防に効果的な運動
8種類の介入方法で検討し、最も効果的だった運動はバランストレーニング。
次いで2番目には認知・動作マルチトレーニングがあがりました。
更に3番目にはマルチモーダルエクササイズで、これは視覚、聴覚などと表在・深部覚といった複数の感覚の情報を組み合わせて処理しながら行う運動です。
更に4番目には抵抗運動が続きました。
そして、ただ歩くだけはなんと8番目。
ただ歩くだけでは効果が最も薄いようです。
●文献から言えること
この文献からは単純な歩行訓練を繰り返すよりもバランスや複数の感覚を混ぜながら行う必要性が考えられました。
転倒はなにかをしているときに起こったり、踏ん張る力が足りないと起こります。
まずは身体の基盤となるバランス能力を底上げし、傾いたときに修正する、ステップでこける前に踏みとどまる力を上げていくことが効果的なようです。
バランスという言葉は非常に広い意味で使われるので、アプローチの仕方は人それぞれ。
ここはセラピストの腕の見せ所になりそうです。
また、転倒が起こるのは何か考え事をしていたり、急いだり、別のものに注意が取られたときに起こりやすいです。
二重課題など色々なものを織り交ぜていくことが転倒予防に重要となりそうですね。
ただ歩いてもらうだけではなく、バランスなのか、認知・高次脳面なのか不足している部分を高めたり、補ったりしながらより良い状態になれるように支援していきましょう。
それではまた次回の記事でお会いしましょう。