こんにちは。
脳卒中のリハビリをしていると必ず出会う「痙縮」。
そんな痙縮の経過についての1年間の縦断的研究があります。
痙縮はどのように経過していったのでしょうか?
●文献
今回ご紹介するのは「Upper-limb spasticity during the first year after stroke: stroke arm longitudinal study at the University of Gothenburg(脳卒中発症後1年間の上肢痙縮:ヨーテボリ大学における脳卒中上肢縦断研究)」というもの。
初発の脳卒中で3日目に腕の麻痺があった患者117名を対象にし、3日目、10日目、4週目、3ヶ月目、6ヶ月目、12ヶ月目に評価を行ったようです。
●評価方法と結果
評価として用いたのは
Modified Ashworth Scale(MAS)とFugl-Meyer Assessment(FMA)の2つ。
日本でも脳卒中後の評価として良く用いられる評価ですよね。
MASは1点以上で痙縮、FMAは満点でない場合に障害として定義したそうです。
結果は痙縮は3日目の評価でに全体の25%,12カ月目の評価で全体の46%に認められ,ほとんどの患者で脳卒中後1年目に重症度が上昇したとなりました。
ほぼ半数が1年以内に痙縮が出現するとされているんですね。
痙縮の始まる場所は肘関節屈筋に出現し、その後肘関節伸筋と手関節屈筋に出現したそうです。
痙縮のある患者は,FMAの感覚運動機能が有意に低下し、疼痛、関節可動域の減少、感受性の低下がみられたともされました。
●文献から言えること
①焦りすぎない
痙縮が見られてくると、関節が硬くなってくるなど患者さんが不安に襲われることが多くあります。
しかし、あまりに痙縮に気を取られ過ぎて間違った動きをしてしまう方がいる場合には、多くの方が経験することと捉え、焦りすぎないように話していってもいいかもしれません。
②感受性など注意
注意しないといけないのは結果に合った「感覚運動機能が有意に低下し、疼痛、関節可動域の減少、感受性の低下」について。
痙縮での疼痛や関節可動域の減少はすぐにイメージできると思います。
もう一つ忘れてはならないのは「感受性の低下」。
この感受性の低下により、患者さんは良い運動のフィードバックを得にくく、こちらが引き出したい動きも表出しにくいということを想定しておかないといけません。
この結果からは痙縮のコントロール=感受性の向上にもなるので、我々が引き出したい動きを出すためには増悪しやすい痙縮をリハビリや自主トレの中でいかにしてコントロールしていくかにかかっているかもしれませんね。
多くの患者さんが経験する痙縮。
それは回復の過程上、仕方のないことかもしれません。
しかし、許容する部分を残しつつも、どのようにしていくかは患者さんの予後を左右します。
将来のためにうまく支援していけるようにしていきたいですね。
それではまた次回の記事でお会いしましょう。