こんにちは。
臨床をしていて必ず悩まされる感覚障害。
明確な予後予測も立てにくく、今のままを想定して動くケースもあると思います。
しかし、そうしたケースをなんとかしようと海外でも様々な研究がなされています。
今回は感覚障害のある研究について取り上げます。
●文献
今回の文献は「Somatosensory Deficits After Ischemic Stroke(虚血性脳卒中後の体性感覚障害について)」。
101人の虚血性脳卒中患者に対して、脳卒中後5日以内にMRIを撮り、障害部位を特定し、グループに分けました。
合わせて、複数の触覚・体性感覚モダリティ(圧、温度識別、感覚消失、2点識別、関節位置、運動感覚)が含まれるスケールを用いて評価を行い、modified Rankin Scale運動機能や動ける能力を評価しています。
単純に感覚障害の経過だけでなく、運動機能との関係も調べようとしたようですね。
評価は発症時、3か月後、12ヵ月後に行われました。
●結果
発症時、101名中、60名の患者が少なくとも圧や温度覚、位置覚などの内、1つの体性感覚モダリティに障害を示しました。
これは全体の割合でいうと59.4%に上ります。
障害の程度で言うと軽い触覚の障害が38.7%と最も多く、温度の障害が21.8%と最も少なかったようです。
温度覚の障害が少なく、軽い感覚障害が多いのは普段の臨床の感覚とも一致するのではないでしょうか?
経過は3ヵ月後、すべての体性感覚モダリティにおいて有意な回復が観察されましたが、12ヵ月後にはさらにわずかな改善がみられただけでした。
感覚障害の改善の程度は時間と共に鈍化するようです。
他にも感覚のおおもとである、一次および二次体性感覚野と島皮質の病変が体性感覚障害と有意に関連することも示されました。
運動障害ともリンクすることがあり、急性期に重度の障害であった方が感覚障害の回復の程度は少なかったようです。
●臨床では
この文献から言えることは「急性期のmRSの重症度が軽度な人で発症から期間の経っていない人ほど、感覚障害は改善する可能性がある」というもの。
反対に発症した時に介助されないと動けず、1年以上発症から時間が経っているなどする方の場合は回復の可能性が少ない、もしくは回復の程度が小さくなりがちということです。
また、一次感覚野などの障害でも回復の見込みは減ってしまいやすいと言えそうです。
発症から3ヶ月であれば回復期でリハビリをしていることも多いと思いますが、そうした時期はいくらかの回復の希望をまだ持ってもいいのかもしれません。
反対に発症から長期間経っており、発症時重症だった施設や訪問でのリハビリ利用者さんには過度の期待を持たせるのはいけないかもしれません。
いずれのケースでも絶対はないです。
過度に期待を持たせ過ぎず、過度の悲観にもならないようにうまく関わっていきたいですね。
いかがだったでしょうか?
日々臨床を行う上で感覚障害は患者さんや利用者さんから予後を聞かれるケースも多々あります。
多くの情報を仕入れ、障害部位を考慮しながらこうした質問にも答えていきたいですね。
それではまた次回の記事でお会いしましょう。