こんにちは。
リハビリは「re(再び)habilitation(習慣)」からなる言葉で、対象者の習慣を再び取り戻すということが到達目標です。
そこで使えるかもしれない1つの手法がSWOT分析。
今回はSWOT分析とはなにか、その後にウィークネスアプローチ、ストレングスアプローチ、どのように用いていくのかについて取り上げます。
●SWOT分析とは?
SWOTとは、
・S:Strength(強み)
・W:Weakness(弱み)
・O:Opportunity(機会)
・T:Tereat(脅威)
それぞれの頭文字をとってSWOTとしています。
元々、ビジネスの世界で「戦略や計画を立てるために、外部環境と内部環境の両方を正しく把握・分析する」という目的で使われていた手段です。
分析を行う際には各項目を書き出し、自社の立場を洗い出します。
ビジネスの世界では自社でコントロールできる部分を「SとT」、コントロールできない部分を「OとT」で表すようです。
更に4項目を書き出し、「クロス分析」を行います。
出典:https://keywordmap.jp/academy/swot/
この様にプラスの部分とマイナスの部分を具体的に上げ、成長戦略を練っていきます。
私たちリハビリの世界で患者さんや対象者さんをSWOT分析すると
S:その人の持つ強み(筋力が強い、認知機能が良いなど)
W:その人の持つ弱み(麻痺、高次脳機能障害など)
O:物的環境・人的環境のプラス面
T:物的環境・人的環境のマイナス面
このようになります。
では、どのように活用していくのか、2つのアプローチ方法とあわせてみていきます。
●ウィークネスアプローチ
1つ目のアプローチはウィークネスアプローチです。
これはその名の通り、「弱い部分を強化する」関わり。
病院などで行われている機能訓練などのリハビリが一般的です。
麻痺に対するアプローチや骨折後の筋力低下に対するアプローチなど大事な関わりですが、生活期に入ると問題が起こりました。
それは「具体的な目標がない」。
漠然と良くなりたい、筋力をつけて漠然ともっと動きたいという傾向に陥りやすいです。
結果、年齢を重ねるたびに動きにくくなる身体を見て失望し、抑うつ傾向になったり、思い通りにいかないことへの失敗体験を重ねてふさぎ込んでしまう傾向が出てきます。
「努力しても加齢による衰えを克服することは非常に難しい。でも、努力が足りないと言われたり、強要される」
こうなると辛いですよね。
結果、抑うつ傾向や主体性の低下をまねいてしまうことがあることがウィークネスアプローチの問題点となります。
一方、ストレングスアプローチとはどのようなものなのか見ていきます。
●ストレングスアプローチ
ストレングスアプローチとは文字通り「強みを強化する」関わり。
身体や精神面を「これくらいしかできない」ではなく、「これくらいできる」と捉え、目標を定めていきます。
完治を目指すのではなく、
「自分の可能性を再認識し、意欲や主体性を取り戻す」ことを目標とします。
また、自分だけでなく、家族・仲間の意欲や生活機能を効果的に引き出し、同時に自己実現・健康増進にもつなることも目標の1つ。
強みを活かして弱みをコントロールできるようにしていくわけです。
自分の能力や人的・物的環境(資本)を活かして小さな成功体験を積み重ね、活動の機会を増進させることで、抑うつもおさえることができ、その人らしい生活を再獲得できる関わりです。
●どのように用いていくのか
では、実際にどう用いていくのかですが、まず強みと弱みを知る必要があります。
身体的・精神的な評価はもちろんですが、人的・物的環境(資本)の評価も必要。
加えて、「興味関心チェックリスト」や「強みチェックシート」のようなツールも用いつつ、その方の人生歴や興味・意欲のある事柄を見つけ出します。
その上で、SWOT分析の各項目を列挙し、クロス分析にて更にその人の強い部分と弱い部分を分析します。
この際、弱い部分に対するアプローチがダメというわけではなく、注目すべきは強い部分。
強い部分に着目して、そのために弱い部分も支援していくのは良いのですが、弱い部分に注目しすぎてただ単に機能訓練に走るのは従来のウィークネスアプローチに戻ってしまいます。
強み×機会では
「できる範囲で地域の活動に参加し、健康推進につなげる」
「週2~3回仕事に行き、社会的な役割や他者との交流を行う」
「家族と〇〇へ旅行に行く」
といったことが挙げられます。
弱み×機会では
「体力が低下しないように散歩をする」
「イラっとして口論になりそうなときはいったん落ち着く」
などが挙げられます。
強み×脅威では
「認知面がしっかりしているので家族間で健康管理を行う」
「病院と違い、体調管理をしてもらえないので、かかりつけ医に早めに相談する」
などが挙げられます。
弱み×脅威では
「急変時に、救急を呼べるような環境を整える」
などが挙げられます。
以上のことを参考にしていくと「その人らしい生活」について実現できる目標ができてきます。
作業療法士協会が推進している「生活行為向上マネジメント(MTDLP)」とも通ずる部分がありますね。
色々な考え方を基にその人らしい生活が再建できるよう支援していきましょう。
それではまた次回の記事でお会いしましょう。