こんにちは。
医療従事者の方々は日々「転倒」と闘っているかと思います。
今回、入院中の患者さんが転倒し、裁判になったケースがありました。
皆さんはこのケースどう思いますか?
●転倒に関する裁判
今回、裁判となったのは兵庫県立西宮病院。
2016年に認知症の87歳男性がトイレ介助中に転倒し、重篤な脳障害を負い、寝たきりとなり、2年後に亡くなったというケースでした。
とある夜勤看護師がトイレ介助に付き添っている最中、別の重篤な感染症患者のナースコールがなったため、排便介助で対応し、その間に男性患者が一人で動いて転倒したとのことです。
男性患者の家族は怪我による入院生活の継続で男性は完全な寝たきり状態となり、両手足の機能が全廃となったと主張。
一方、病院側は感染症患者は早期に対応せねばならず、排便の介助を急いだことはやむを得ないと主張しました。
この裁判で裁判所は「認知症の男性から目を離せば、勝手にトイレを出て転倒する可能性が高いことが十分に予見できた」と認定。
別室の感染症患者がオムツに排便すれば問題がなかったとして「優先しなければならなかったとは認められない」と病院側の非を認め、約500万円の賠償を命じました。
この裁判はSNSで話題となり、物議をかもしています。
では、転倒はどの程度発生してるのでしょうか?
●転倒はどのくらいある?
全日本病院協会によると、調査に協力した18病院のうち、全患者の1.5~4.5%が転倒していました。
この中で骨折など重篤な怪我をした患者さんがどの程度いたかは分かりませんが、20人~70人に1人ほどは転倒を経験しているようです。
皆さんの病院でも似たような状況でしょうか?
特に回復期リハビリテーション病院は活動的な方が多く、身体的な制限も少なくしているため、件数はもっと多いかもしれません。
いずれにしても転倒はどこでも発生しうるもので、注意はしていても完全に防ぐことは難しいです。
●司法の判断に対する私見
今回の裁判では別室患者にオムツを使用すれば良かったという判断でした。
ここが腑に落ちない医療従事者の方も多いのではないでしょうか?
確かに別室患者がオムツに排泄していれば男性患者の転倒はなかったかもしれません。
ですが、皆さんの職場で「みんながこけないようにオムツに排泄させましょう!」という職場はあるでしょうか?
おそらく今はかなり少数派です。
患者さんの身体機能を維持し、その方らしい生活を維持するためには病院であっても一律にオムツにすれば良いなどということは断じてありません。
裁判は昔の判例を参考にするため、昔はオムツをすればいいでまかり通っていたのかもしれません。
ですが、今は違います。
これでは患者さんのためにトイレ誘導している医療従事者が馬鹿を見ます。
人を増やせればこうした問題は解決するかもしれませんが、どこも人手不足で困っています。
司法はもっと現代に即した柔軟な判決を下してほしいですね。
最後にですが、だからといって転倒を安易に許してしまってはいけません。
転倒があった場合には再発予防策を必ず考えながら、仕事に取り組んでいきたいですね。
それではまた次回の記事でお会いしましょう。