作業療法つぶやきブログ

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現役作業療法士(OT)のブログ。不定期週2回12時更新。カテゴリー一覧はスマホの方はページ下部へどうぞ。

【神経難病】ALSでの筋トレは運動機能維持効果あり

こんにちは。

 

リハビリの現場で筋萎縮性側索硬化症(ALS)の方のリハビリをしたことがある方も多いと思います。

また、地域柄難病が多い地域もあります。

筋力維持を図る際にどの程度行うのか疑問に思うこともあるかもしれません。

今回はALSとはなにか、筋力維持を図るにはということについて取り上げます。

 

筋萎縮性側索硬化症(ALS)とは

まずは難病情報センターから引用します。

「手足・のど・舌の筋肉や呼吸に必要な筋肉がだんだんやせて力がなくなっていく病気です。

しかし、筋肉そのものの病気ではなく、筋肉を動かし、かつ運動をつかさどる神経(運動ニューロン)だけが障害をうけます。

その結果、脳から「手足を動かせ」という命令が伝わらなくなることにより、力が弱くなり、筋肉がやせていきます。

その一方で、体の感覚、視力や聴力、内臓機能などはすべて保たれることが普通です。」

 

身体のどこかから筋力が発揮されなくなり、最終的には寝たきりや人工呼吸器を使用した生活となります。

一方で、感覚や認知機能は残ります

認知機能が正常なので、身体が動かくなるのも自身でしっかりと分かってしまう病気です。

呼吸機能が落ちて、気管切開で人工呼吸器を使用するなどした場合でも残された目や手や足で意思表示をして家族や介助者とコミュニケーションをとっていきます。

身体の動きに反応して意思をコンピューターで表出する意思伝達装置もあります。

 

●運動はなぜ大事なのか

適度な運動は身体の機能維持が図れるとされています。

病気の進行を遅くすることができ、自身でしたいことができる期間が延長できるとされているんですね。

一方で過度の運動は筋力低下の可能性が示唆されています。

リハビリでは一般的に運動は良く用いられるのですが、データとしては本当に効果があるのか次で見ていきます。

 

●運動は効果があるのかについての研究

今回ご紹介するのは「Therapeutic exercise for people with amyotrophic lateral sclerosis or motor neuron disease(筋萎縮性側索硬化症および運動ニューロン疾患患者のための運動療法)」です。

 

この研究では過去のALSに対する運動療法の研究をまとめ、運動療法の効果について検証したものです。

運動した群と運動しなかった群で比較を行い、効果を見ました。

運動療法抵抗運動・強化運動・持久力運動・有酸素運動を指します。

運動負荷は中等度負荷とされ、少し疲れる程度の運動でストレッチや通常の生活動作よりはやや運動負荷が高い運動とされています。

 

検証を行った結果、運動した群は筋萎縮性側索硬化症機能評価スケール改訂版(ALSFRS-R)の機能評価で有意な改善を認めました。

ALSFRS-Rとは1999年に開発されたALS患者の包括的な重症度尺度です。

項目は以下のようになります。

1.言語
2.唾液
3.嚥下
4.書字
5(a)食事用具の使い方(胃痩設置なし)
5(b)指先の動作(胃痩設置患者)
6.着衣,身の回りの動作
7.寝床での動作
8.歩行
9.階段登り
10.呼吸困難
11.起座呼吸
12.呼吸不全

これらの項目について有意な改善が見られたというわけですね。

 

一方で、QOL(生活の質)、疲労、筋力については、有意な差は認められていません

また、運動をした・しなかったに関わらず、筋痙攣の増加、筋肉痛、疲労感などの悪い反応は見られていません。

 

私自身が興味深いのは運動の有無で筋力が変わらないのに、ALSFRS-Rのような動作能力は維持しやすかったという点です。

最大筋力が変わらないのに動作能力が維持できるという事は一つひとつの筋出力や筋の協調性が維持できた可能性があるのではないかと考えれます。

なんとなく筋力維持訓練でひとくくりにはしてしまうこともありますが、運動をすることで私たちは動作能力を担保しやすくしているのかもしれません。

 

最後に研究では、有意差はあったとしながらも研究データが少なすぎたと結論付けられています。

ですが、1つのデータとして持っておくには重要な研究です。

今後、私たちがALSの方に関わる上で頭に入れながら関わっていきたいですね。

合わせて、最新の研究も探してなにが効果的なのか考えていきましょう。

 

ではでは。