こんにちは。
今日は神戸大の論文「Icing after eccentric contraction-induced muscle damage perturbs the disappearance of necrotic muscle fibers and phenotypic dynamics of macrophages in mice(遠心性収縮による筋損傷後のアイシングが壊死筋線維の消失とマクロファージの表現型の動態を阻害する)」についてのご紹介です。
この論文では肉離れなどの重篤な筋損傷後にアイシングを行うと、筋再生が遅れることがあることを示唆しています。
詳しく見ていきます。
●従来のアイシング
スポーツによる怪我ではアイシングは頻繁に行われる処置です。
出血がない場合では、軽度~重症な状態までアイシングは幅広く使用されます。
しかし、アイシングの筋再生への効果は肯定的な研究と否定的な研究に分かれています。
今回取り上げた研究は、アイシングは筋再生を阻害するという先行研究を参考にしながら、独自のデータを出し、アイシングの効果を検討しています。
●研究方法と結果
今回の研究はマウスによる研究です。
電気刺激による遠心性収縮で肉離れのような重篤な筋損傷を起こし、アイシングをした群とアイシングをしなかった群を作りました。
2週間後の結果は小さい筋断面積の割合がアイシングをした方が多かったようで、筋断面積が小さいというのは筋の再生が遅延していることを表しているようです。
なぜそうなったのか次で見ていきます。
●なぜそうなったのか?
私たちが傷を負い、筋繊維などが壊死するとマクロファージと呼ばれる貪食細胞が、壊れた組織を貪食(食べて)してくれます。
しかし、アイシングを行うとこの貪食してくれるマクロファージが遅れたり、効果が弱まることが分かりました。
この貪食してくれるマクロファージをM1マクロファージと呼び、M1マクロファージは貪食した後に、細胞の再生を促進させるM2マクロファージへと切り替わります。
この切り替わりも遅延してしまうんですね。
つまり、アイシングを行うと、壊れた組織が長く存在し続け、傷の治癒を促進してくれる細胞も中々できなくなるということです。
この反応が肉離れなど重篤な筋損傷の時は起こることが分かったため、アイシングは筋再生を遅延させると結論付けられました。
では、アイシングはダメなのか次で見ていきます。
●アイシングは悪なのか?
「悪ではありません」
今回の研究では重篤な筋損傷をモデルとしました。
しかし、軽微な筋損傷では同じような結果とならない可能性があります。
ですので、全ての筋損傷でアイシングをしない方が良いというのは間違いです。
日常生活でも怪我をした際に冷やすのかどうかは迷う時があると思います。
また、我々セラピストは患者さんや利用者さんから冷やすのはどうかと聞かれることも多くあるため、そうした時に答えられるようにしていきたいですよね。
今後も様々な研究が出てくると思うので注目です!
ではでは。