こんにちは。
作業療法には学会報告で成果を発表する以外に作業療法協会に事例を登録するというものがあります。
作業療法というものがどのような成果があるのかというデータを蓄えると共に、自己研鑽を積み、認定作業療法士や専門作業療法士になるために必要なものとなっています。
そんな事例登録ですが、2021年9月を持って一旦受付停止となります。
なにがあったのか確認しながら、今後どうなっていくのか考えていきたいと思います。
●事例登録制度の目的とは
事例登録制度は2005年に開始されました。
その目的は以下の3つです。
①事例報告の作成によって会員の作業療法実践の質的向上を図る
②事例報告の分析によって作業療法成果の根拠資料を作成する
③事例報告の提示によって作業療法の成果を内外に示していく
作業療法士の質を高めると共に、成果を多く蓄積し、対外的なアピールに用いていくものとして活用されてきました。
2021年5月現在、2069事例ものデータが集積されています。
学会報告や論文も合わせるとかなりのデータが出てくると思います。
また、事例登録されたものは会員であればいつでも閲覧でき、自己研鑽にも活用できています。
では、なぜそのような事例登録制度が受付停止となるのか、次に見ていきます。
●なぜ一時受付停止となるのか
原因はこの2つです。
①システムの老朽化により連絡メールが届かないなどの管理・運営業務に多大な支障を来している
②現在の登録形式(情報)では作業療法成果の根拠資料を作成するという本来の目的にはそぐわない
協会のコンピュータシステムを刷新し、事例報告集積の効率化を図り、会員の利便性の向上と協会業務の効率化を図るために一時受付停止となるようです。
①の部分は詳しくは私の方では分からないので、なんとも言えないのですが、②は本当にそうなのか考えてみたいと思います。
●一般事例登録から生活行為向上マネジメント事例登録への移行の流れ
一般事例登録で記載するのは以下のものです。
「目的、事例紹介、評価、基本方針、実施計画、介入経過、結果、考察、文献」
これらを記載して査読者が合格としたもののみ登録されます。
判定内容もいくつかあり、一番低いD判定を受けるともう一度査読してもらうこともできません。
二度と登録してもらえない判定もあり、厳しいものです。
もう一つ登録できるものがあり、それは生活行為向上マネジメント事例の報告です。
こちらは事例に対して人的資本や物的資本も含めた総合的な介入により、作業療法の成果をあげていくものになります。
生活行為向上マネジメント事例の報告については今後も登録は可能です。
つまり、一般事例登録から生活行為向上マネジメント事例登録に軸を移した形になりました。
一般事例登録の問題点をあげるとすれば、理学療法とのすみわけが生活行為向上マネジメントと比べ、行いにくいことです。
そこが成果の根拠として上げにくいとされた理由ではないかと考えられます。
ですが、本当にそうなのでしょうか?
●一般事例登録は作業療法成果をあげる上で不十分?
作業療法士が作業療法として介入し、出た成果がどちらの書き方によっても根拠の一つとして証明できます。
作業療法らしさを出すために一般事例登録がダメで、生活行為向上マネジメントが良いなんてことはないはずです。
そうだとしたらこの15年の集積期間は本当に無駄だったと思います。
一番大きな理由はシステム面ではなく、査読者や添削者の負担なのかもしれません。
作業療法士はここ15~20年で激増しています。
激増はしても、査読できる人間は限られています。
その中で途中から生活行為向上マネジメント事例登録が開始され、手が回らなくなってきた可能性があります。
作業療法らしさを出すには生活行為向上マネジメント事例登録は良いと思います。
ただ、一般事例登録でも作業療法らしさを出せないとは思えません。
本当はいろんな角度で色んな書き方でも作業療法の成果をあげていくことが重要と考えます。
私としては一般事例登録の復活を願います。
ではでは。